第五章 絶情谷
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第五章 絶情谷
迷霧の谷
ゴホゴホ!
緑は必死に背中の傷を庇っているが、この霧の中ではきつそうだ。
金鈴:この霧……邪気が漂っているな。
金鈴:絶情谷はいつからこうなったんだ……
倚天:ここはどうやら安全な場所ではないようだな。気をつけたほうがよい。
屠龍:虎穴に入らずんば虎子を得ず、だな。
絶情谷に入ろうとすると、霧の中からしなやかに影が躍り出た。
淑女:お待ちなさい!
絶情谷に入っていいと誰が言ったかしら?
無剣:仲間が傷を負った。この谷にある薬の材料を探している、融通してもらえないだろうか。
淑女:ここは病院じゃないわ!お薬を探したいなら、他を当たって頂戴!ふふっ
女性は言い終わると絶情谷へ入っていった。追いかけようとすると突然無数の影が現れる。
幽谷の佳人
金鈴:淑女剣だよ。昔からずっと絶情谷の入り口を守っているんだ。
倚天:知っているのか?
金鈴:それなりに。
緑:オレがあいつなら、金鈴っちが来たら、旧知の仲に免じて通してやったのに。
金鈴:残念だけど、彼女は君ではない。
屠龍:免じてやる必要もねぇな!あいつらが俺らを止められるわけがない!
倚天:議論していても始まらぬ。強行するべきだ。
霧中の魍魎
屠龍:こりゃ、魍魎だな。
霧の中で私たちはまた魍魎に囲まれた。邪気溢れる目が私たちを霧の中から睨みつける。
緑:いまの魍魎……もしかしてさっきのひとに操られてる?
無剣:ここは、まるで蜘蛛の巣みたい。
金鈴:絶情谷で何か大きな異変があったようだ。
緑:ゴホゴホ……
ここの魍魎は多すぎる…もう何匹斬ったかわからない。
倚天:もう戻ることはできない。ならば、考えずに荊棘を切り開いて前へ進むしかない。
屠龍:どんなに魍魎がいようと、俺たちは勝つ!
公平な取引
淑女:お見事でしたわ!こちらの手間も省けて、
とっても感謝してますのよ。
倚天:お前がこいつらを操っているのか?
淑女:絶情谷があんな化け物を飼っているわけないでしょう?
あの不気味な鏡が現れてからというもの、化け物が押し寄せ、いくら斬ってもわいてくるのよ。
金鈴:まさか……引魂鏡?
屠龍:ここにも引魂鏡か……だとすると、無視は出来ないな。
屠龍:あの鏡さえ壊せば、魍魎もここに集まることはない。
淑女:あの鏡を壊してくださるなら、
お礼として薬草とお茶にもご招待致しますわ。いかがかしら?
緑:悪くない条件だな。
緑の顔色は悪いが、今の言葉で少し笑みを浮かべたようだ。
倚天:我々の目的は引魂鏡を破壊することだ!案内を頼む!
空谷の君子
淑女:君ちゃん!
君子:お姉ちゃん……
君子:気をつけて!
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
緑:…ぅあっ!
突然現れた魍魎(もうりょう)を始末すると、緑は苦しそうに呻いた。
淑女:あなた大丈夫?この度は助けていただき、感謝いたしますわ。
緑を心配して体を支えたら、彼も安心そうに私に微笑んだ。
緑:心配するな
君子:…………
少年は私達を見ると、その瞳の中には悲しさと驚きにあふれていた。
君子:お姉ちゃん、この人たち誰?やっぱりお姉ちゃんは外の人の方がいいんだ……う、うぁあ……
緑:オレたちはただ魍魎退治を手伝っただけだよ。
緑の言葉を聞くや否や、少年は私達に背を向けて遠くに走っていった。
淑女:君ちゃん?!
緑:うあ…俺達敵だと思われちゃったかな?
金鈴:そんなことより、周りを見て。
魍魎王:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
遠くから魍魎の叫び声が聞こえた。
屠龍:……しつこいやつらだな。
淑女:さっきの音は… 新たな魍魎?!
彼女は急いでその方向に向かう。
無剣:行け!彼らが危険な目に遭ったらまずい!
私たちは彼らが走っていった方向へ進む。
守護一心
無剣:緑が指差した方を見ると、寒潭の岸にある石台の上に引魂鏡が置かれている。
魍魎王:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
君子:くそっ!
淑女:はぁ!!
君子:……お姉ちゃん!
魍魎王:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
君子:ぅあっ!
君子:近寄るな!
屠龍:小僧、一人でかっこつけるなよ!
倚天:下がりなさい。
君子:僕は絶対後にはひけない!魍魎からお姉ちゃんを絶対守る!
君子:ぅあっ!
倚天:魑魅魍魎め!好き勝手できると思うな!
妖鏡粉砕
屠龍:これで五つだな。
倚天:よく覚えてるな。
屠龍:当たり前だろ!この世に幾つ引魂鏡があっても、この屠龍が全てぶち壊す!
緑:ぅあっ!
緑はバランスを崩すと、その場に倒れ込んだ。
金鈴:傷が悪化している……はやく玉鱗氷魚を……
淑女:玉鱗氷魚ならこの寒潭にたくさんいますわ。
姉弟は寒潭から玉鱗氷魚を一匹捕まえると
緑に食べさせた。真っ白だった顔色が少しずつ緩和されていく。
しばらく毒を抑えるために、姉弟は私たちが暫く谷の中に住むことを許してくれた。
緑:ありがとう…!
淑女:わたくしたちを助けてくれたもの、当然ですわ。
金鈴:玉鱗氷魚は、一時的に氷魄の毒を抑えるだけだ。
完全に解くには、やはり氷魄の力が…。
緑:本人捕まえても、解いてはくれないだろうけど。
屠龍:あのガキ、もし断ったら俺と倚天がただじゃおかねえからな!
君子:…………
君子:絶情谷に長年住んでいたけど貴方たち程腕のたつ人は初めて見ました。
僕にもこれほどの武芸があったら自分の守りたい人が守れるようになるかな……
倚天:上には上がいる。
強くなって大事な人を守りたいと思うなら、一つのところにこだわっていてはいけない。
君子:僕にこの絶情谷の外に出るよう説得でもしてるの?
淑女:君ちゃん、もしあなたが望むなら、わたくしたちも一緒に外の世界を見に行きましょうか?
君子:………………
彼は沈黙した。長い長い沈黙のあと、彼は結局何も言わずその場を去った。
淑女:君ちゃん!
彼女も、慌てて弟の背中を追ってそこから離れた。
屠龍:オレたち……止めねえのか?
倚天:捨て置け。
黄昏の夢
鳥がさえずり花が咲く絶情谷は、残照で編んだ絹布を羽織り、艶かしい姿を見せた。
絶景を名残惜しんだ私達は、夕暮れが描き出す美しい姿を脳裏に刻み付けた。
この夕暮れの景色……なんだか懐かしい感じがする……
……昔……ここに来たことがあるのか?
まさか……
寒潭で見たことがある……四つの祭壇だ……
祭りのために作ったのかな……それとも……
どこかで……聞いたことがるような……独り言なんて……
はぁ、最近疲れすぎたせいかな……
淑ちゃんと君ちゃんの厚意を受け取って、谷で休もう。
絶情谷で数日休んだ。
緑に当てられた猛毒が少なかったため、私たちは剣塚へ向かった。
道中逃げている魍魎を発見した
瘴気散らず
なぜまだ魍魎が?
金鈴:この谷はもう長い間瘴気に満ちあふれていた。魍魎王はもういないけど、ここに溜まった瘴気が完全に晴れるまで、
ここの魍魎たちは存在し続けるだろうな。
無剣:う…なぜか…すごく眠くなってきた……
緑:起きて……起きて!
無剣:リョ……ク……?
緑:やっと目が覚めた。ここは危ないよ、早く起きて。
金鈴:引魂鏡を破壊したのに、魍魎たちが引かない?
倚天:考えることなどない、まずは殲滅する。
屠龍:おい倚天!
信念の道
どうしたんだ?
倚天:なにか?
屠龍:古墓を出てからずっと、毎晩修練してるんだろう?
さっきの勢い…まさか、俺がお前より先に突破したことを気にしてるのか?
屠龍:なんなら、ここで一つ手合せしてやろうか?
倚天:興味はないな。
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
倚天は迷いもなく剣を振った。斬られた魍魎が、真二つになった。
無剣:す、すごい……
緑:それが最後の一匹だろうね。
金鈴:もう魍魎の気配はしないね。
倚天:時間が惜しい。行くぞ。
屠龍:待てよ倚天!
倚天:まだ何か?
屠龍:強くなって大事な人を守りたければ、立ち止まってはだめだ。
もっと修練を積んで、自分自身の限界を突破し続けるしかねぇ、お前もそう思ったんだろ?
倚天:何を勘違いしている。
屠龍:ほぉ?
倚天:お前たちの目的は、強くなって大事なものを守ること……お前たちの道は、人を守る道。
しかし私は、お前たちとは違う……
倚天:私は自分の選んだ道を、進み続けるだけだ。
内応の謎
無剣:倚天と屠龍の話しによると、ここからあと数日で歩けば剣塚まで辿り着けるのだ。振り返れば、危険だらけの旅だった上に、おかしいことばっかりだ。
それこそが眠れない理由となるかもしれない……
無剣:特に崑崙山と桃花林に起こったことは、この旅は私たちが思ったよりずっと複雑だと信じさせた……
無剣:何だか……知らないうちにずっと誰かに導かれたような気がした……
しかしそれでも、向こうはどうして私たちの動きがわかったのか……
ひょっとして私たちの中に内通者が……?
無剣:だとすると……内通者は……
無剣:緑?
無剣:緑といえば……目覚めた最初から私のそばにいたのが一番疑わしいところだ。
彼のことが全くわからないのに……どうしてそこにいたの……
無剣:それに、緑はその時剣塚まで付き合ってくれるとすぐ決定した……
まさか彼が……?
無剣:しかし……
古墓に命をかけて私をかばってくれて……今になっても全快していないのに……
その時下手したら死んじゃったかも。
無剣:それが苦肉の策だと思いたくない……
無剣:緑といえば……目覚めた最初から私のそばにいたのが一番疑わしいところだ。
彼のことが全くわからないのに……どうしてそこにいたの……
無剣:それに、緑はその時剣塚まで付き合ってくれるとすぐ決定した……
まさか彼が……?
無剣:しかし……
古墓に命をかけて私をかばってくれて……今になっても全快していないのに……
その時下手したら死んじゃったかも。
無剣:それが苦肉の策だと思いたくない……
無剣:金鈴?
無剣:金鈴といえば……崑崙山にいたあの夜、一人で姿を消したのが一番疑わしい。今までずっとその夜の行方を教えてくれなかった……
無剣:あいにくその時に謎の人たちの会話を聞いていた。どう考えても、行方不明になっていた金鈴はあの二人と関係ないとは思えない……
無剣:しかし私たちと再会した金鈴は不思議な顔を浮かべた……
同じように現状に混乱していて、私と緑に警戒を抱えていた。
無剣:それが演技じゃなく本当の気持ちだと知った……
何が起ったのか、彼は本当にまったく知らなかった。
無剣:金鈴といえば……崑崙山にいたあの夜、一人で姿を消したのが一番疑わしい。今までずっとその夜の行方を教えてくれなかった……
無剣:あいにくその時に謎の人たちの会話を聞いていた。どう考えても、行方不明になっていた金鈴はあの二人と関係ないとは思えない……
無剣:しかし私たちと再会した金鈴は不思議な顔を浮かべた……
同じように現状に混乱していて、私と緑に警戒を抱えていた。
無剣:それが演技じゃなく本当の気持ちだと知った……
何が起ったのか、彼は本当にまったく知らなかった。
無剣:倚天と屠龍?
無剣:正直、彼らは内通者になるわけがないと思う。
無剣:古墓に助けてくれた謎の人を不自然にかばったのも事実だが……
本当はあの人は彼らの旧友だったかの気がする。
なにせ、そこで私たちを殺しようとしても朝飯前だった。
無剣:そして倚天と屠龍はそれぞれ個性強かったが、大らかで正義感を持っているのが同じだ。
それに魍魎と戦う時に、いつも先打ちで戦いながらもみんなを守っていた……
無剣:どう考えても彼らも内通者ってわけがない。
無剣:……無剣:正直、彼らは内通者になるわけがないと思う。
無剣:古墓に助けてくれた謎の人を不自然にかばったのも事実だが……
本当はあの人は彼らの旧友だったかの気がする。
なにせ、そこで私たちを殺しようとしても朝飯前だった。
無剣:そして倚天と屠龍はそれぞれ個性強かったが、大らかで正義感を持っているのが同じだ。
それに魍魎と戦う時に、いつも先打ちで戦いながらもみんなを守っていた……
無剣:どう考えても彼らも内通者ってわけがない。
無剣:私何考えているんだ!
緊張しすぎたからかなー
無剣:彼らが助けてくれなかったら、きっと八方塞がりになるしかない。
緑、金鈴、倚天に屠龍、そんな彼らは内通者のはずがない。
そんなありえない……
無剣:はあ、旅の終わりに近づくほど、心が乱れる……
未知への恐怖か?それとも……
またみんなと……一緒に……旅に出るのかな……
無剣:えっと……明日道のりはまだ長いから……
あれこれ考えないで……早く寝ないと……
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